囲碁お見知りおきを「毎日のように書く」視聴味覚演芸制作者会議軍団「囲碁お見知りおきを」団員、中原由貴のお話。

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
はなこちゃん 00:48
0

    「ファンクとフーガを合体させたファンクーガをやってみたいねん」

    と、ある関西出身の男が言った。双六亭何年目の頃だったろうか。まだメンバーが4人ほどいた時分の話である。ある者は笑い、ある者はあまりちゃんと聞いていなかった。私はというと、なんのこっちゃと思っていた。

     

    それから幾年月、双六亭はメンバー3人になっていたが、『双六亭』という最初のフルアルバムを出した。そのアルバムでは豪腕かつ繊細で恐れを知らず、能力の高さは天井知らずのウィル・スミス似の男がベースを弾いてくれた。彼がいなかったら、双六亭のアルバムは出ていなかったと思う。

     

    時は経ち、歌うときもギターを弾くときもつねにブルースをしょっているユニークな白い男が双六亭からいなくなった。ショックのあまり乱心した私は、じゃあ私1人で双六亭やっていくわ!と関西出身の男まで辞めさせようとした。そんなとき、ビカビカに明るくて情に熱く、いい塩梅にいい加減で、しっかり生きている宮崎出身の男が双六亭に入りたいと言ってくれた。じゃあトリオで1からやろう、という話になり、双六亭は死なずに済んだ。

     

    関西で10年活動を続ける強烈に個性的なユニット「冬支度」が、東京で対バンしたのをきっかけに、これまた関西で20年活動を続ける唯一無二のトリオ「ぱぱぼっくす」を巻き込んで、双六亭のレコ発を関西でやりましょう!と画策してくれていた。実現したら双六亭初の遠征である。ならば、それまでに今の3人で作った音源を絶対に持っていきたい。そこから私たちの一大プロジェクト、又の名を寝不足で突き進む桃源郷への旅路が始まった。

     

    じゃあ何を録音しようか、候補はいろいろあった。何度も会合を重ねて話し合ううちに、遠征の日取りが決まった。でもまだ半年ほどあるからがんばればアルバムが録れる。何曲入りにしようか、何を入れようか、と言ってる間に、気づけばほんの数ヶ月前になっていた。なぜだ。フルアルバムは絶対に間に合わない。じゃあ5曲入りのミニアルバムにしよう。5曲入りか。何を録ろうか、ジャケットはどうしようか、プレスはどこに頼もうか、プリプロしようかと言ってる間に、3ヶ月前になっていた。なぜだ。5曲入りは絶対に間に合わない。じゃあ3曲入り・・・3曲と言われても全然絞り込めず、そうこうするうちに時間はどんどんなくなっていった。

     

    双六亭には「はなこちゃん」と呼ばれるシリーズが何曲かある。2番目のはなこちゃんはすでにアルバム『双六亭』に入っていた。現在残るは1、3,4でちょうど3曲。しかし、1は一部のデモのみで、3は作った人以外は聞いたことがなく、この時点ですぐに録音できそうなのは最近ライブでよくやっている4のみである。1はかつてライブでやろうとして試したがなかなか難しく、3人でやってうまくいくのかどうかも甚だ疑問だった。

     

    「ファンクとフーガを合体させたファンクーガをやってみたいねん」

    という関西弁をふっと思い出した。こ、こ、これだ!この曲はファンクーガとの出会いを待っていたに違いない!!ものすごいことに気づいてしまった!!これでしょ!ファンクーガってこういうのでやるんでしょ!!!と興奮気味に関西出身の男に伝えると「ああ。せやなあ」と言われた。話を聞いていない、もしくは同意はしないサインである。

     

    ここから昨日までは嵐のように過ぎていった。私は思い込みで「ファンクーガってこういうのでしょ!」というのを勝手にどんどん育ててしまい、1人であらぬ方向へ進みまくった。今にして思うとだいぶめんどくさい状態だったに違いない。そしてそれを受けた2人が私のまったく整理されていない話を根気強く聞きながら、だいぶ受け流したり無視したりしながら、それぞれに思いつく限りのアイディアを詰め込みながら、主に関西出身の男が孤軍奮闘して音楽的に仕上げてくれてでき上がったのが「はなこちゃん episode1『野良猫』」である。最後の最後のギリギリまでありとあらゆることを試しまくり、できてみて初めてこれだったのか・・・と全員が知った、というような不思議な録音体験であった。

     

    そして実はこれを完成に至らしめた最も大きな出来事は、ドラム録音でお世話になったギンジンスタジオの福岡史朗氏にダメもとで「ほんとはここにオーケストラみたいなシンバル合わせてバシャーン!ってやつを入れたいんですけど、シンバルを持つための持ち手がないんですよねえ」と言ってみたときの、

     

    「あるよ」

     

    という鶴の一声だったかもしれない。ギンジンスタジオに、ない道具はない。そしてオープニングで入っている私のつたないマーチングドラムの1方で、大久保由希嬢所有のものすごく繊細でご機嫌なスネアが使われていることも、ここでそっとお伝えしておこう。

     

     

    まだ「はなこちゃんepisode1」のことしか話していないのにこんな文字量になってしまった。本当は、はなこ1,3、4ができるまで、そして遠征でのありがたかったあれやこれやをお伝えしようと、ものすごく久方ぶりに筆を取ったのである。しかしここまででこんなになってしまったので、本日は『はなこちゃん短篇集』誕生秘話のepisode1ということで、ここでお別れしよう。

     

    この度の録音には、コーラス録りをさせてもらったイワタハウスでごちそうになった晩ご飯や、その晩ご飯を作ってくれたザ・カンガの宇野文子嬢、そして録音を一緒に楽しんでくれたハッチの「ごきげんよう」も詰まっています。お楽しみいただけたらサイワイです。そしてこれを3人でライブでどうやってやるのか、それをこれから考えるのもまたサイコウに楽しみです。

     

     

     

    | - | comments(0) | trackbacks(0) | posted by nakahara yuki
    Comment








    Trackback
    この記事のトラックバックURL: http://mooran170.tamacowolds.net/trackback/175
    << NEW | TOP | OLD>>