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視聴味覚演芸制作者会議軍団「囲碁お見知りおきを」団員、中原由貴のお話。
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私は夜道でロックする
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     事件はついさっき起こった。

     寒い夜の帰り道,帰路の途中にあるコンビニを出てチャリンコをこぎ始めたが,寒いので「しんさん」を歌いながらチンタラ走っていた。歩くのと同じくらいの速さである。おそらく歌詞を思い出し思い出し歌っていたせいもあって,チャリンコはフラフラしていたのだろう。
     あっ!と思ったときはもう自分と左側の壁の間に人影がすぐそばにあった。つまり,私はおそらくゆっくり左に寄りながら走ってしまっており,左の壁と自分の間が人ひとりギリギリ通れるか通れないかくらいの幅しかなくなったところへ,後ろから私を追い越そうとした自転車が突っ込んで来たのである。

     そこまではよくある話で,たいていこういう時は,ジャッ!!と追い越され,「あっすいません」と言ったときに相手に「ちっ」などと言われて憤慨し,追いかけてとっつかまえようと思った頃にはその自転車はもう小さくなっていた,というのが通例である。

     ところが今日はちがった。そのお兄さんとおじさんの間くらいの男性の乗った自転車が私の真横に来た時,何かがロックした。いや別に比喩表現を使って恋に落ちた話をしているわけではなく,彼の荷物についていた鍵か何かと私が斜めにかけていた鞄の何かがガチャリとはまってしまい,結構なスピードで私を追い越そうとした彼の自転車に,私はロックされて連れて行かれてしまった。つまりはこういう状態である。
     

    「ああああああごめんなさいごめんなさい」
    「おおおおおおすいませんすいません」

     と互いに大声を上げ,謝りながら私たちは走った。結構な距離を結構なスピードで真横にピッタリとくっついたまま併走した。一瞬ブレーキを握ろうかとも思ったが,私が急ブレーキをかけたら彼が前に飛び出てしまうような気がして握れなかった。おそらく彼もそう思ったにちがいなく,彼もブレーキをかけなかった。
     このまま信号まで行ってしまったらどうしようと思ったそのとき,段差でロックしていた何かがカチャッと外れた。私は左におっとっと,と倒れかけながらも無事停止でき,彼はそのままのスピードでだいぶ進んだところで停まった。くるりとこちらをふり返ると,深々と一礼をして先を急いで走り去って行った。

     奇妙な数秒間であった。もう彼に会うことはないだろう。あまりのスピードと状況の珍妙さにより,私は彼の顔を一度も見ていないので,また会ってもおそらくわからない。ただ一つ印象深かったのは,彼はロックした瞬間から大声で謝り通しであった。私もつられて謝り続けた。こんな意味不明な状況に突如陥れられたにも関わらず,私はそのロック後の帰り道,なんとも清々しい気持ちであった。ありがたくすらあった。「しんさん」の続きを朗々と歌いながら帰った。

     というよりフラフラちんたらチャリンコをこいでた私も十二分に悪いんですけどもね。注意一秒怪我一生です。みなさんも,暗い夜道と自転車とロックには,十分お気をつけください。
    | - | 21:45 | comments(0) | trackbacks(0) | - | 昨年の記事









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