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視聴味覚演芸制作者会議軍団「囲碁お見知りおきを」団員、中原由貴のお話。
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夜のとばりが降りてきて・・・
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    「夜のとばりが降りて来て…」

     細々とではあるが長年のご愛顧を賜り,無事100回を迎えたのみならず,101回目以降もヘラヘラと再スタートを切った囲碁お見知りおきをラヂオがこの口上で始まるというのは,聴いてくださったことのある方々はご存じのことかと思うが,これをしつこくやり続けたおかげで,この文言はラヂオを聴いてくださっている方々の間で,ずいぶんと浸透してくれた模様である。大変ありがたい。しつこくやってよかった。
     実はこの文言,ラヂオをやりたいやりたいと案を練っていた頃に私が働いていたとある八百屋のおやっさんが表へ出て呼び込みをする際によく口にしていたものである。夕暮れ時,陽がかげってきた頃に「さあさあ,夜のとばりが降りて来て,晩ご飯は今夜は何にしますか,ねえ,おかあさん」などと威勢良く流暢にいい声で始まるあの呼び込みを聴きながら,中でにんじんを袋に詰めたりなんかしていた私は,いつかこういう台詞がスラスラと出てくるおっさんになりたい,と強く思ったものである。
     このおやっさん,顔がフランク・シナトラによく似ており,レジ〆をしながら口ずさむのはディーン・マーティン,そしてこの2者が持つ陽気な雰囲気とユーモアと迫力と,ほんのちょっとのスチャラカ感を併せ持ったニクい人物であった。しかしそんな一面がわかるのはずいぶん後のこと。
     ここで働くことになった初日,私は緊張のあまり巨大な声で「おはようございます!!!」と店内に颯爽と入ったものの,何からやればよいかわからず,はっぴを着込んでただただウロウロ,オロオロと半笑いを浮かべて店内を歩き回っていた。最初はこのシナトラは目も合わせてくれなかった。「よろしくお願いします!!」と間近で言いながら後をついて回り,数時間経ってやっと声をかけてもらえた第一声が,

    「カボチャ,切ってみろ」

     であった。世界中のみなさんが知っているように,カボチャはかたい。こう来るからにはおそらく八百屋なら誰もが知っている,通の切り方があるにちがいない。しかし当然八百屋で初めて働く私はそんなものは知らない。が,切り方がわかりません,などと言える空気ではない。そんなことをうじうじ考えていると

    「おい,カボチャ,切れねえのか」

     怒ったシナトラの顔は怖い。なんつったってマフィアである。いやそれはさておき,私は「き,切れます!」と渾身の力で,ふおおおおお!!!!と力任せに真っ二つに切った。しかしこんな切り方でいいはずがない。おいおい,何やってんだ!!!と怒鳴られるのを覚悟でズガン!!と切った。我ながらまな板が置いてあるテーブルが曲がる程の力の込めようであった。

    「・・・なかなかやるじゃねえか」

     ニヤッ。とシナトラは笑った。うおおおおうれしい!!!ありがとうございます!!!ともうその日からシナトラの一挙手一投足を見逃すまじ,とシナトラの後をついて回った。カボチャの特別な切り方は,とにかくここに包丁を入れて力一杯切るんだよ,といったような,なんというか特別なような特別でないようなものであったが,その日から野菜のことをたくさんシナトラに教わった。数か月経ち,やっとシナトラが私の前で鼻歌を歌ってくれるようになった。ある日意を決しておやっさんに

    「フランク・シナトラに,似てますね!」

     と言ったら「よせよお前〜」と顔をくしゃくしゃにして笑っていたが,その顔もシナトラにそっくりであった。
     

     囲碁お見知りおきをラヂオが生まれたのはその頃である。その八百屋はなくなってしまい,シナトラとはもう会うこともなくなってしまったが,囲碁お見知りおきをラヂオは今週101回目を迎え,あのおやっさんの呼び込みの口上も101回目を唱えた。いつかおやっさんに聴いてもらいたいなあと思っているが,そんな日が来るまでまだまだもう少しがんばりたいと思う。そんな決意もありつつ,101回目からの囲碁ラヂオは新コーナーを次々と携えながら,愉快に始まっております。
     どうぞ,今後ともお見知りおきを。
     
    | - | 23:49 | comments(0) | trackbacks(0) | - |









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