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視聴味覚演芸制作者会議軍団「囲碁お見知りおきを」団員、中原由貴のお話。
ドラマーの勲章のゆくえ
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     ドラマーの勲章、それは何だとお思いだろうか。

     

     ここ1年ほど、私はドラマーの勲章を持ち歩いていた。これを持ち歩き過ぎたために大変なことになった友人もいたな・・・というのを頭の隅に置きながら、いやしかし長年ドラムを叩き続けて来られた証だ、怖がってどうする、むしろありがたいと思わねばならぬのだ・・・!とは思っていなかったが、とにかく持ち歩いていた。だんだん大きくなるそれに多少の恐怖を抱きつつも、黙っているだけできっとあの人もあの人も持っているに違いない、私だけが持っているはずはない、と言い聞かせて、とにかく奢らず、高ぶらず、自然にまるで自分の一部であるかのように過ごそうとしていた。

     

     ところがある日それは無視出来ないものになっていた。それがそこにあることを気にせずに過ごすことは、もう出来なくなっていた。さすがに恐ろしくなった私は勇気を出して病院に行った。「ドラマーの勲章科」がある病院を探して、意を決して門を叩いた。

     

     ・・・誰も出てこない。

     ふと見ると「今月は○月○日以外全部閉まってます」的な貼り紙がしてあった。本当はかなりビビっていた私はほっと胸を撫で下ろし、これはまだ時が満ちていないからもう少し持っていていいってことだという確信を得て、バーガーキングでバーガーを買ってスキップしながら帰った。

     

     一ヶ月後、一日たりとも忘れることが出来なかったそれは、ついに私の生活を圧迫し始めていた。数年間よくばって持ち続けたために最後は「あんな恐ろしい思いはこれまでしたことがなかった」と言っていた友の顔が脳裏をよぎった。ちょうど先日訪れた「ドラマーの勲章科」のある病院も開いている頃だ。重い腰を上げてもう一度私は立ち上がった。

     

     受付のおばちゃんたちが気さくでやさしくて、相当怒られるような気がしていた私はひとまずホッとした。「ドラマーの勲章がありまして・・・」と話してみると「とりあえず先生にお話してみて、ね。きっと大丈夫だから。落ち着いて」とやさしく言ってくれた。おそらく青ざめていたであろう私の顔に少しずつ血が戻って来た。

     

     診察室に入ると、今年の大河で話題になっている柴崎コウが化粧を落としたようなすっぴん美女が、「こんにちは。どうされましたか?」と言ってにこりと笑った。あれ?ここの先生はおじいさんだとネットに書いてあったけども・・・と思いつつ、嬉しい誤算にウキウキしながら話してみた。

     

    「実はドラマーの勲章を持ってまして」
    「いつからですか?」
    「もう1年ほど前からかと思うんですけども」
    「・・・そうですか。気がついたら持っているものですものね。明確な時期はわからないものです」
    「そうですよね!」
    「でも、ずいぶん長いこと持ってらっしゃったんですね」
    「ええ・・・まあ・・・ご、ごめんなさい」
    「先週、父が亡くなりまして」
    「え!?」
    「ここは父の病院で、父がドラマーの勲章専門だったんです。私は専門が違うので、一応診ることはできるんですが、もしドラマーの勲章を手術するようなことになった場合は、別の病院をご紹介することになりますが、よろしいですか?」

     

     そういうことか!と私は腑に落ちながら、つい先週お父さんが亡くなられたというのに、残された病院を継ぎ、凛としてドラマーの勲章をぶら下げた私に笑顔を向け、専門外の事象に恐れず当たろうとする彼女を見ているうちに「うっ!」と泣きそうになってしまった。

     

    「大丈夫ですよ!きちんと出来る範囲のことはやりますから!」
    「あ、いえその、すいません。ありがとうございます」

     

     診察してもらうと、まあまだ持っていていいだろう、ということで薬を処方されて帰った。私は胸がいっぱいだった。彼女とここで出会ったのも何かの縁である。勲章もまだ持っていていいみたいだし、世界は美しい!と両手を広げながら自転車で帰った。

     

     この日は、恐ろしく荒れた海への記念すべき船出の日であった。

     

     明けましておめでとうございます。今年1本目の双六亭ライブは1月25日(水)下北沢440にて、この日はサザンライツからベースの土屋さん、鍵盤のジャスミンさんをお迎えして、レアな5人編成でお届けいたします。久しぶりにはっかのみなさんと相見えるのも実に楽しみです。どうぞお見知りおきを〜!!

    | - | 03:56 | comments(0) | trackbacks(0) | - |